Kalessin Action ― The Never Ending Endeavour ―

地震・火山専門の研究開発員のブログ。あららぎハカセ(理学)。つくばで高いところに行くモノ🛰の中身を作ってます。

事業仕分け

相当ネット上で物議を醸してしますが…基本的にはこのように公開されたプロセスで国の予算が審議されるのは将来的には良いことだと思います。仕分け自体は決定ではないので、これを機会に日本の予算決定プロセスがより合理的になればそれでいいのではないかと思います。

スパコンに関しては短絡的に”日本の科学行政は終わった!”とかいう声も聞かれますが、コンピュータ開発というものは基本的には非常に一時的なものです。予算の8割方使ってしまった計画をいまさら見直すのはかえって非効率かなという気がしますが、そもそも仕分け人からの指摘のような非常に初歩的な質問に十分にこたえられないというのは、むしろそっちのほうに著しい問題があるのではないかという気がします。あろうことか国の税金を使うのであればそれなりの説明責任は果たされてしかるべきです。そんなのは予算獲得の初歩の初歩です。僕もそこでやられて国外追放になりました。

議論の進展には色々と批判もありますが、毛利衛さんのピシッとした議論の仕方には強く共感しました。僕もああいう、冷静に論理を数値を使って展開する姿勢を叩き込みたいものです。…とはいえ、正直政治家なんかと(ごめんなさい、でも僕のなかの毛利さんって一つの象徴なんですよ)と対決する彼の姿はあんまり見たくなかったです。彼のような人はもう少し別の場所で能力を発揮するべきではないかと。でもああいう場でもきちんと自己主張できるのはさすがです。どこぞの基本を忘れて議論の場にも出ずに怒っていた学者さんとは大違いです。

今回非常に問題になっているのは若手育成事業の削減ですが、これに関しては僕も増強の方向にしたほうがよいと強く感じます。というのも、現在博士志望の人のサポートとかいう狭い視点の話ではなくて、もっと広く、博士をもっと多くの人に目指してほしいからです。

僕が卒業した高校はレベルの高い進学校で、僕なんかが及びもつかない人がいっぱいいました。その多くが東京大学京都大学、医学部に進学していきました。正直、体よく落ちこぼれてしまった僕としては彼らがうらやましくてしょうがありませんでした。

…が、6年たった今、どうでしょう。あれほど才気をほとばしらせていた人たちは普通のサラリーマンになったか、こともあろうに理系をやめて文系の公認会計士とか法科大学院に進んでしまった人が数多くいました。むろんこうした職業がダメとはいいません。むしろ能力が収入に跳ね返ってくる非常に良い、社会貢献できる選択肢だと思います。

 でも、それでも僕にとってはショックでした。今僕は博士課程に在籍してPhDを目指していますが、せいぜい自分の才能と時間と戦う日々です。大学入試の時から、彼らならきっと東大や京大で勉強を続けて僕の分野でいったら金森先生やJordan先生(どっちも地球物理学史上の巨人)みたいに人類の歴史と戦える、小学生のころ僕が抱いていた理想の場所に到達できる人達なのだとうらやましく思ったのです。でも、そうはならなかった。

 ここに日本の理系の待遇の現実がにじみ出ているような気がしてならないのです。日本の科学分野はアメリカから振り返ってもやはり世界に届く場所にあると思います。教育システムも抜群です。でも、それが本当に才能のある人たちの将来の選択肢とはならない。アメリカみたいに博士課程の金銭サポートもなければ博士課程後の進路も真っ暗です。場合によっては日本はもっともっと科学が発展していい下地のある国なのです。そこを社会も国もわかっていない。
 
 今回の仕分け人のやり方を批判するのは簡単です。でも、本当に問題があるのは彼らだけなのでしょうか?他にもっと大きな問題があって、その一端が彼らの予算削減という行動に垣間見えているだけなのではないでしょうか?もう少し広い視点でみるとこの国の理系教育の在り方を問い直さなくてはならないと思います。