Kalessin Action ― The Never Ending Endeavour ―

地震・火山専門の研究開発員のブログ。あららぎハカセ(理学)。つくばで高いところに行くモノ🛰の中身を作ってます。

人と会うこと,そして科学

研究活動は、人間関係という一見あまり科学的でない要素が実はかなり重要だったりしますが、今は自分にあった環境にいるようですね。良かったです。


とある先生から今回のフランス滞在に先立って頂いたメールです.私は過去いくつかの研究機関を渡り歩いてきて,その中で色々な出会いがありました.自分でみつけた出会いもありますが,それだけではなく自分の担当教員や所属している研究機関が前々からやっていた交流の恩恵を受けれることも多々有ります.


一番お世話になっている先生

間違いなく一番インパクトがあったのは今共同研究をさせて頂いているニュージーランド地震学の先生でしょう.その先生と最初にお会いした時は自分が工学系の院で修士をやっていた時のこと,その先生がサバティカルを利用して日本のあちこちの大学でセミナーをされていたのでした.当時私が所属していた工学系の建物と理学系の建物は別の場所にあって,地下鉄代を自腹ではらって40分位かけて聞きに行きました.
当時私は地震とは全然関係ない火山の熱水がテーマでしたが,火山噴火前後の観測ということで,一応聞いてみよう思ったのです.セミナーのあと今から考えると思い出したくもないようなマヌケな質問をしたお陰で向こうが私の顔をなんとなく覚えていて,さらにたまたま自分がそのあと手がけた研究テーマの一線の研究者ということで以来何年もお世話になっています.


西郷隆盛

今フランスでお世話になっているボスとの出会いは昨年の鹿児島でした.ボスはその道では結構知られている(というかみんな知っている)若手の研究者で,私が工学系の院を離れるときにちょうどNature系の雑誌に論文が掲載されていて,いつかそういうプロジェクトをやってみたいとおもっていたのでした.無論その論文を読んだ時はあんまり理解もできていなかったし,まさかその数年後,奨学金付きで直接共同研究などとは夢想だにしていません.
昨年夏の火山系の学会で招待講演をされていたので,学会のセッション前にちょっとはなして,その日の学会が終わった後に


”近くに本物のラストサムライ西郷隆盛の最期の場所があるのですけど,行きませんか?”


と,自分の担当教員が共同研究者であるという立場を利用し,上手く信用させて,思い切って誘ってみて,向こうも”おー,行ってみたい!”とあと2人(フランス人)誘って一緒に見に行きました.日本史は中学生の時と,大学に入って読んだ翔ぶが如く以来でしたが,当然向こうは明治維新なんて知らないので結構関心をもって頂けました.


記念写真をとった西郷像前.みんなこの下で並んでいます.

その後,改めて自分の研究計画を打診して,サインをもらって(これが大事)奨学金応募にこぎつけます.後で知ったことですが,今所属している研究機関はフランスの研究機関と交流をもっていて,私のグループの先生方とはなんとなく顔がわかる間柄だったとのこと.図らずも大学生の時言葉を勉強していた国にお金をもらってまで滞在させて頂いているのは,自分が応募したからではなく,その前段階で種をまいていただいていた周囲の方々のお陰ですので,そのあたり忘れないようにしたいものです.


研究と人間関係

査読*1中の論文は結構ノイズも多いデータの解釈なので,研究者によっては"こんなの意味ない"と言う人もいる位です.実際査読者からもそういう指摘がありました.そうした場合本人もですが,共同研究者も結構粘り強く作業していかなくてはなりません.日頃からつまらないことで衝突している感じだと,とてもではないですが論文は出版できません.


一昔前と違って火山系の分野は,観測機器,手法ともにかなり成熟してきて,一分野だけでなく別の分野,例えば火山の化学をやっているひとと火山の物理をやっている人とが協力することの重要性がわりと認知されるようになってきました.ので,きっかけがあれば出会いは大事にしたいなーというスタンスです.

*1:学術専門誌に論文投稿した際に,匿名でチェックする研究者.通常複数.