Kalessin Action ― The Never Ending Endeavour ―

地震・火山専門の研究開発員のブログ。あららぎハカセ(理学)。つくばで高いところに行くモノ🛰の中身を作ってます。

愛の形

1年ぶり位に親父に愚痴を言ってみることにした。


僕“かくかくしかじか(一文、具体的な内容なし)、世の中って、厳しいね。”
父“母さんの愚痴は、全部僕がうけてるよ。君も、まだまだこれからさき、理不尽なことは社会でたくさんあるよ”

さすがだ、彼は25年間子供に対するセリフが全く変わっていない。どうやら彼の辞書にはマンネリという言葉はないようだ。実は中学高校時代、どこの家庭でもあるように、僕も、彼のこうした無頓着さに相当腹が立っていた。

しかしである。僕ももう25歳。サンタクロース時を止められると確信したように、さまざまな見方ができるようになっている。もう少し真面目に話せよという突っ込みも確かにできるが、逆に彼が敏感だったらどうなるか、その弊害逆に考えてみることにした。そこで、僕は一つの真実に直面する。あまりに明快な答えに、戦慄した。そう、


父と母は、続かない。



サンタクロースがどうやって一晩で世界中の子供たちにプレゼントを配ってるんだという邪悪な子供の思念は、サンタクロースが時間を操れるというブレークスルーによって崩壊した。発想の自由な転換とは彼が僕にくれた最大の贈り物である。


私の父は営業をしていたこともあって、並大抵のことで動じない。いくら愚痴をいっても、僕が生まれてこの方20年少し、同じセリフで切り返す。自分を“家族のサンドバックだ”といい、その時は頼もしく思ったものだが、普通の相手なら、分かってくれないと放りだすだろう。よくよく考えてみると、母は子供に分かっていることを延々としつこく言うタイプだ。こちらはこちらで子供一同頭を抱えていたが、彼の無頓着さと神のようなバランスを保っていたのである。ニワトリが先か、卵が先か、この夫婦はこういう互いの欠点を見事に調和させ、二人以外成立しえない真の愛をはぐくむことに成功して(=お互いの欠点をエスカレートさせて)いたのである。これは奇跡としか言いようがない。ちょっと痛い目にも会っていたようだが、今のところ取り返しのつかないレベルでの犠牲者は出ていないので多めに見よう。欠点のない人間など、この世に存在しないのだから。
そういえば、父は仕事柄良く出張するのだが、出張する度に母は必ず彼に電話している。あれの数十パーセントが愚痴であるとしたら、父の忍耐は


驚異的


としか言いようがない。普通の人間なら気がくるってしまうだろう。涙ぐましい。よく彼は“社会で生きていくことは大変なんだよ”というが、周囲が彼になにか切実に伝える時の大変さは、思わず涙せずにはいられない。父さん、僕も僕なりによくわかるよ。


思えば、両親への反駁は自己存在へのアンチテーゼだったかも知れない。


お父様、お母様、あなた達のむすこは、元気です。