Kalessin Action ― The Never Ending Endeavour ―

地震・火山専門の研究開発員のブログ。あららぎハカセ(理学)。つくばで高いところに行くモノ🛰の中身を作ってます。

話題にもならないIFREEを誰か助けてくれ② 〜事業仕分け〜

まぁ、彼らのWebページを見れば大概のことはわかるのですが、とりあえず、彼らの働きぶりは、中間報告にまとめられています。

IFREE中間評価報告

評価委員会のメンバーは藤井先生をはじめ、僕が勝手に”地震学の生ける伝説”と呼んでいるカリフォルニア工科大学の金森博雄先生、Modern Global Seismology (通称レイウォレス)のLay先生、マグマ・マントルなど地球科学の流体力学の大家Manga先生など、新米の僕からしてもぎょっとするような超一流の人たちが名を連ねています。物理学分野で言ったら、南部先生や小林・益川先生がやっているのとほとんど変わりません。仕分け人が指摘したような慣れ合いのいい加減な評価とはまったく話の次元が異なる人たちです。

Modern Global Seismology, Volume 58 (International Geophysics)

Modern Global Seismology, Volume 58 (International Geophysics)

 また、評価書の中の研究報告も非常に具体的な研究成果が各担当の方によってまとめられています。質から言ったらGRL位はありそうです。
 組織の在り方についてもディレクターの任期が1年であるが、長期的なプログラムの維持のために、5年程度を推奨したり、上級研究員のジェンダーバランスが取れていないなど、かなり細かい指摘がなされており、仕分け人の抜本的見直しどうこうの指摘は当たらないといえるでしょう。
 この組織の特色の一つに技官の多さが挙げられます。日本の科学シーンではあまりプラスに語られることが少ない彼/彼女らですが、実際は高度な研究をするには欠かせない非常に重要な存在です。
雑用のない生活
K先生、なんとなくじゃありません。
火山から地球システムの解明へ 研究を通して広がった好奇心

 アメリカのWHOIやSCIのような大規模な研究施設、あるいは規模の大きい研究所と日本の大学の最大の違いは技官の数です(下記資料:WHOI Webページより引用)。


 これが生産性の違いに大きく響いています。日本の大学・研究機関では技官の少なさゆえ、研究者が純粋に研究に使える時間が大幅に削られているのです。実際僕が所属していた大学でも技官なのか研究者なのかさっぱり分からない人がいました(まぁ、英語の論文もなかったし、最後に論文を書いたのが何年も前だったので技官だったのでしょうが…)。こちらに来た時に”観測機器のマニュアル見せてください”っていったら”いや、そういったものはNSFのものと技官に設置を任せるので、君は細かい装置の扱いは勉強する必要はない”と変な眼で見られながらはっきり言われました。
 このIFREEは比較的新しい研究機関・部署(H13〜)なので、ここは言ってみれば巽先生の理想の一つの結晶であるわけです。”日本の研究機関としては”先進的ではないかと思います。

 競争性がないままに国費投入と評価書に書かれていますが、彼らもちゃんと競争的資金をとってきています。その上で研究を遂行するのに必要な予算をもらっているのです。
IFREEの科学研究費補助金
 そもそもIFREEの予算って60%が人件費(=お給料)。仕分け人の皆さん絶対理解してなかったと思いますけど??オープンにして議論する意味はあったと思うのですが、そうした基本的なコミュニケーションが欠けていた感は否めません。
 第一、彼らは結構アウトリーチ活動も頑張っているのです。
サイエンスカフェ
『ジュニアリーダートレーニング 海と地球の不思議に会えるJAMSTEC 〜後編〜 』
 巽先生はちなみに身長193cmと、日本人離れ(日本人ですが)した体躯の持ち主。学会でも100m位先からでもすぐわかる。そんな彼が石ころを片手に小学生相手にしゃべっていたシーンを想像するとほほえましい。僕なんかはちょっと話すだけでも相当な覚悟が必要な人である(←AGUで遭遇)。正確に言うとちょっと話すどころか激突したこともあります(向こうは当然僕のことなんか知っている筈もなかったのですが* )。まぁ、叩きのめされましたが(>_<)

 こうやって書いていたらだんだん腹が立ってきました。そりゃあ国の予算がないってことはわかるけど、こんなに成果を出していて、説明責任をちゃんと果たしている研究機関の予算を削る必要と意味がない。確かに日本の研究システムには予算の運営の在り方など無駄があるのは否めませんがそれはもっと別の形で議論されるべきです。少なくともこれだけの組織の解散という形はとるべきではありません。

 ここにもありますが、悪いのは政治だけかという気もします。あれだけ膨れ上がった予算をみて、うそつきだ政権交代だなどとすぐに騒ぎ立てる一方で、いままで一党独裁状態をあまりにも長く続けた日本国民の責任も大きいのではないかと思います。まぁ、ただちに予算を削ることになるかは疑問ですけど、政治が科学に与える影響の大きさに気付かされた事件ということにはなりそうです。というか早くなんとかしてくれ。


 * 巽先生のプレゼンを最初に聞いたのは2008年の地球惑星科学連合大会、彼は僕が生涯忘れないフレーズでプレゼンを始めました。
「みなさんのカルク-アルカリ系列マグマに関する常識は10分後に崩壊しているでしょう」
 …いや〜(・・;)どうしようかと思いましたよ。
 * 2009/11/23 リンクミスを修正。読者の皆様、すみませんでした。たくさんのブクマ感謝いたします。