チェスや囲碁(?)と違って、将棋にはこういう格言があります。
"強くなりたければ、いい盤といい駒を持ちなさい" by 大山康晴
将棋の場合、タイトル戦で羽生九段や藤井六冠が使うようなものはとんでもない値段するのですが、僕もそれなりのものはかれこれ10年前に揃えました。
当時、予算的にそんな高価なものは買えないと思ったのですが、せっかくなので駒込のお店に。
しるひとぞしる超高級店ではありますが、任天堂の盤駒以上のそれなりのものは一通り手に入ります。
盤の材質は新カヤ、桂、ヒバ、そして憧れの榧(かや)とグレードが上がっていき、厚みなどでも値段が変わってきます。また、最近はプリントで目盛を打っていることも多いですが、榧盤だと、職人さんが本漆を使って仕事してくれていることも多いです。東京の業者さん(といってもだいぶ減ったそうですが)だとヘラ盛りという頑丈な作りにしてくれるところが多いです。
さてさて、当時は佐賀に住んでいたので事前にメールでどんなのありますかとメール。
残暑お見舞申し上げます。
ご遠方から上京していただけるとのこと、厚く御礼申し上げます。
当店のお勧めといたしましては、
1)菱湖書の彫駒¥(当時の値段)
2)国産本カヤ1寸¥(当時の値段)+本カヤ駒台¥(当時の値段)
などがございます。
もう少し手頃な盤となりますと、
桂材またはヒバ材などでしたら1寸で¥6,000~¥7,500などもございます。
(駒台は別売になります。)
どうぞ宜しくご検討のほど、お願い申し上げます。
ご来店を心よりお待ちいたしております。
丸八碁盤店店主 鬼頭徳治郎
さすが高級店の店主さん、気品さえも感じる丁寧なお返事が返ってきました(※だいぶ前なので価格などは今は少し変わっているかもしれません)。Gmailを掘り起こしたのですが、なんだか懐かしいです。海千山千の人ですから、安い選択肢も教えてくれる一方でさりげなく榧(カヤ)材の盤をプッシュ。盤は妥協して予算は1万円くらいと考えていたけど、ムムムム。
因みにおもちゃ屋さんとかだと2000円でお釣りがくるから"盤だけでx万?高い!○ったくり!?"って思うかもしれませんが、車みたいな値段の超高級品まで扱う東京でも指折りの専門店のこのお店では実はそんなにめちゃくちゃ高いものではありません(!)。例えば1寸というのは盤の厚さですが、これが2寸となると当然倍の値段になります。また、榧でも日向(宮崎)産のものは特に木目色合いが美しいので同じ2寸でも10万前後したりします。訳がわからないですねwでも、ものがいいと使用感が圧倒的に良かったり、それだけ長持ちしたりする訳です。因みに榧は香りがめちゃくちゃいいです。
このお店は特に日本産の質が良い榧材の将棋盤の揃えが圧倒的なことで有名なのです。まぁ将棋しない人からすると駒だけでx万とか正気の沙汰ではないかもしれませんが、ちゃんとした高級榧材で将棋盤や碁盤を作ろうと思うと乾燥だけで10年以上かかったりするので(!)逆にそんな貴重な代物をx万そこらで売ってくれるのは超良心的ではないかとさえ思ったりもします。あと、木でできたものなので当然色々な仕上がりになるのですが、このお店の品物や仕事はどれもとにかく格好いい!この後、他にも碁笥を買ったりとか碁盤の修理お願いしたりとかしましたけど、どれも納得の一品でした。囲碁将棋用品は一度買ったら基本的にずっと使うし、いいものだと子供から孫まで使い続けるものなのでちゃんとやる人はいいものを揃えしまった方がいいとは思います。まぁ、いいものも持ってはいるけど普段使うのは連盟で売ってるプラ駒と布盤だったりの人も多いですが...
さて、何かの用事で東京訪問した日に直接訪問。現物の柘植(つげ。黄楊とも書きます。鹿児島土産で櫛なんかが作られているあの硬い木材です)駒の書体二種類と、榧盤とヒバの盤を見せてもらいます。
"...こ、これは...!"
いやーやっぱり名店の榧盤、見ただけでもモノがいいってはっきりわかるんですね。色もいいし、木目も綺麗。そして香りもめちゃくちゃいい。風格に一目惚れしました。あと、盤の目盛も安価なヒバだと工場でプリントしたモノだけれど、榧盤だと漆でしっかりした作り(ヘラ盛りと言います)だとも教えてもらいました。念の為、ヒバも榧ほどではないですが、しっかりとした非常に良い素材です。
結局相当無理して榧盤を買うことにしました。だって欲しくなったんだもん!しょうがないでしょ?酒もタバコもやらないから天も許してくれる...筈(?)
駒は書体が色々あるのですが、最初考えていた菱湖ではなく店主さんから勧められた錦旗という落ち着いた書体に。黄楊の彫駒で一番安いものを購入しました。このお店は羽生さんや藤井聡太さんがタイトル戦で使うようなひとセット50万!歩一枚で1まんえん!(※モノによってはそれ以上!)みたいな駒もいっぱい扱っているので黄楊駒としては安い部類だったのです...
当時としても今から振り返っても無駄遣いもいいところでしたし、結局トータルで安い小型パソコン買える金額になってしまいましたが、その後東京の今の所属先で色々な人に使ってもらう機会もあったので、まぁ良しとしましょう。これ多分一生どころか僕が○んでも誰かが使ってくれているでしょうから。もちろん次の10年も20年もよろしくです。
ここ何年か身の回りが落ち着かなくて触ってなかったですが、10年経った今もカビもなくて綺麗な状態です。黄楊も榧も年月を経ると色合いが濃く美しくなります。